2026/06/16 17:12

畑の隅に積まれた野菜。少し形がいびつなだけで、味も鮮度も問題ない。それでも「規格外」というだけで、売り先がない。


その光景から、この醸造所は始まりました。

広島県三次(みよし)市にあるクラフトビール醸造所、HIROSHIMA NOH BREWERY。捨てられるはずだった作物に、もう一度居場所をつくる。それが私たちの出発点です。

■ アメリカ生まれ、広島育ち。畑にたどり着くまで

つくり手は、アメリカで生まれて広島で育った37歳の農家です。

2014年、地域おこし協力隊として三次市へ移住しました。都会の暮らしを離れ、選んだのは中国山地に抱かれた小さなまち。

最初から醸造を目指していたわけではありません。この土地の人と畑に向き合ううちに、見過ごせない現実に出会ってしまった。それが、すべての分かれ道でした。

■ じいちゃんが野菜を捨てる、その背中が忘れられない

近所のじいちゃんが、丹精込めた野菜を畑の脇に放っていく。「曲がってるけ、出せん」と一言。

育てた本人が、いちばん悟しそうな顔をしていました。味は何も変わらないのに、市場の規格に合わないだけで行き場を失う。

この光景に衰撃を受け、2018年6月に農業法人を立ち上げました。掲げたコンセプトは「捨てない農業」。捨てる前提を、つくる前提に変えたかったのです。

■ ケール青汁の成功。それでも消えなかった葛藤

最初の主力商品は、ケールを使った青汁でした。ありがたいことに多くの方に支持され、リピーター率は85%。一つの形は、たしかにつくれた。

でも、ふと周りを見渡すと、近所の農家の現実はそう簡単には変わっていない。規格外の作物は、相変わらず畑の隅にありました。

一つの商品では、救える野菜の種類も量も限られる。もっと多くの「行き場のない作物」を受け止める器が要る。そう考え続けていました。

■ 2022年、なぜビールだったのか

たどり着いた答えが、クラフトビールでした。

2022年、醸造所をスタート。ビールは、果実も野菜もお茶も、驚くほど懐深く受け止めてくれる飲みものです。規格外の素材に、新しい主役の座を用意できる。

醸造には、3つの軸を置いています。

・地産地消で地方を盛り上げる。三次の恵みを、三次から届ける
・農家の廃棄を減らし、フードロスに貢献する。捨てられる前に、ビールにする
・ホップや麦など、こだわりの国産原料を使う。足元の素材に、まっすぐ向き合う

この軸があるから、広島のクラフトビール醸造所として、ぶれずに醸し続けられます。

■ 1本ごとに、物語がある

広島県産はっさくのHASSAKU SAISON(金賞受賞)。ぶどうのピオーネが香るPione Ale(銀賞受賞)。ヤーコン茶を使ったCHA IPA(ジャパングレートビアアワーズ 銅賞)に、看板のはちみつスタウトCaramel Honey Stout(ジャパングレートビアアワーズ 銀賞)。

どの1本にも、もとは行き場を探していた素材と、つくり手の畑があります。

ビールレビューサイトUntappdでは、醸造所全体で156件・平均3.58/5の評価をいただいています(2026年6月時点)。一杯ごとに込めた物語が、少しずつ届いているのだと感じます。

規格外という言葉に、別の意味を持たせたい。これは、その挑戦の記録です。

20歳未満の飲酒は法律で禁止されています。お酒は適量で。

三次の畑から生まれた一杯を、物語ごと味わってみませんか。直営店「こっちゃん所」(広島県三次市十日市中2-8-11)でも、お待ちしています。

▶ NOH BREWERYのビールを見る
https://nohbrewery.base.shop/

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