2026/06/16 09:13

少し曲がったきゅうり。傷がついたトマト。粒が不揃いなぶどう。


味は何も変わらないのに、形やサイズが理由で行き場をなくす野菜や果物があります。

その「もったいない」を、おいしい一杯に変える。それが規格外野菜のビールという、広島の小さな醸造所の挑戦です。

■ 味は同じなのに、なぜ捨てられてしまうのか

規格外野菜とは、味も栄養も問題ないのに、形・大きさ・色などの見た目だけで出荷できなかった野菜や果物のこと。

スーパーに並ぶ整った野菜の裏側で、畑には「出せなかった子」が残ります。少し太すぎる、曲がっている、色ムラがある。それだけで売り先が見つからないことは、決して珍しくありません。

農家にとっては手間をかけて育てた作物。捨てる選択は、心が痛むものです。

■ 「捨てない農業」から醸造所が生まれた

HIROSHIMA NOH BREWERYを運営するのは、広島県三次市の農業法人です。アメリカ生まれ広島育ちの創業者が、規格外野菜が捨てられる現実に衝撃を受け、2018年に立ち上げました。

掲げたコンセプトは「捨てない農業」。フードロスを減らし、地方を元気にする取り組みです。そして2022年、新たな一手として始めたのがクラフトビールの醸造でした。

■ なぜ、ビールという答えだったのか

結論から言うと、ビールは素材の個性を生かしやすいお酒だからです。柑橘の香り、ぶどうの甘み、野菜の青々しさ。副原料として加えることで、その魅力がそのまま味わいになります。

さらにビールには、こんな強みがあります。

・付加価値が生まれる…そのままでは売れなかった素材が、一本のクラフトビールに生まれ変わる
・季節を循環できる…旬ごとの素材を仕込み、通年で楽しんでもらえる
・物語が伝わる…どこの誰が育てた素材か、飲む人に届けられる

捨てるしかなかったものに、新しい居場所をつくる。これがアップサイクルの考え方です。

■ トマトに梅に、きゅうりまで。広島素材が一杯に

NOH BREWERYは、地元の素材を惜しみなくビールへ。たとえば、こんな顔ぶれです。

・広島県産はっさくを使った柑橘セゾン「HASSAKU SAISON」(金賞受賞)
・ぶどうのピオーネを使った「Pione Ale」(銀賞受賞)
・トマト、レモン、ブルーベリーを使ったフルーツ系
・きゅうりを使った爽やかなキュウカンバーセゾン
・梅を使ったUME SAISON、かぼちゃのPumpkin Aleなど

果物だけでなく、野菜まで。素材の幅広さに、産地のすぐそばで醸す醸造所ならではの強みがあらわれています。これらは三次の畑とつながった、地産地消の一杯です。

■ 「捨てない」が、そのままおいしさになる

ここが大事なところ。社会のためだけでなく、味のためにも理にかなっているのです。規格から外れた素材は、形が整っていないだけ。中身は完熟だったり、旬まっさかりだったりします。

畑の近くで仕込めるから、いちばんおいしい瞬間の素材をそのまま使える。遠くへ運ぶ必要がないぶん、鮮度の高いまま醸造へ回せます。

つまり「捨てない」工夫が、結果としておいしさを連れてくる。我慢して飲む一杯ではなく、ちゃんと飲みたくなる味になる。そこに価値があります。

■ 飲むことが、小さな参加になる

難しい話は抜きにして。おいしいから飲む、でいいんです。その一杯が、規格外でも諦めない農家を支え、フードロスを少しだけ減らす力になる。

SDGsやサステナブルという言葉を意識しなくても、グラスを傾けるだけで小さな循環の一部になれます。気軽にできるアップサイクルへの参加。それが、このクラフトビールの楽しみ方です。

気になった方は、ぜひ味わってみてください。あなたの一杯が、広島の畑につながっています。

20歳未満の飲酒は法律で禁止されています。お酒は適量で。

▶ 規格外素材を生かしたクラフトビールはこちら
https://nohbrewery.base.shop/

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